6−3 高流動コンクリートに高性能AE減水剤を使用する場合の留意事項
(1)スランプフローとその経時変化
高流動コンクリートに高性能AE減水剤を使用する場合、スランプフローとその経時変化、凝結時間、材料分離抵抗性、連行空気量とその経時変化などの諸性状は、高性能AE減水剤の種類と使用量、コンクリート温度、配(調)合、他の使用材料などによって変わることがあります。図6−1〜3に示すように、高流動コンクリートにおける高性能AE減水剤のスランプフロー保持性能に関しては、スランプフローの経時変化がほとんどない形態、練混ぜ15〜30分後までスランプフローが徐々に大きくなり、その後徐々に小さくなる形態、あるいは練混ぜ直後からスランプフローが徐々に小さくなる形態などの報告があります。したがって、その使用にあたっては、信頼できる資料などを参考にするか、試験室における試し練りのみでなく実機試し練りによりフレッシュコンクリートの流動性、材料分離抵抗性の経時における変化を確認し、荷卸し時に所定の流動性が得られるよう最適使用量を決め、配(調)合を決定するのが良いとされています。
表6-1 高流動コンクリートの配(調)合例
分類 |
W/P
(%) |
s/a
(%) |
混和剤
の種類 |
スランプ
フロー
(cm) |
単位量(kg/m3) |
水 |
セメント |
高炉スラグ |
フライアッシュ |
(1) |
1 |
34.1 |
48.7 |
高性能AE 減水剤 |
65 |
171 |
502 |
- |
- |
2 |
34.0 |
49.0 |
高性能AE 減水剤 |
65 |
170 |
225 |
275 |
- |
(2) |
50.0 |
49.0 |
高性能AE 減水剤 + 分離低減剤 |
65 |
172 |
344 |
- |
- |
(3) |
34.0 |
45.0 |
高性能AE 減水剤 + 分離低減剤 |
65 |
170 |
240 |
160 |
100 |
※ |
(1)−1のセメントは高炉セメントB種 |
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(2)の分離低減剤はセルロース系、(3)はグリコール系 |
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図6-1 スランプフローの経時変化*17
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図6-2 スランプフローの経時変化*18
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図6-3 スランプフローの経時変化*19
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(2)増粘剤(分離低減剤)との組み合わせ
現在高流動コンクリートに用いる増粘剤として市販されているものは、主成分の違いによりセルロース系、アクリル系及びバイオポリマー系などに分類されています。これらの使用については、信頼できる資料あるいは実績などを参考にするか、試験によって確かめることが必要です。また高性能AE減水剤と増粘剤との間には相性のあることが知られており、組合せによっては所要の流動性が得られないなど好ましくない現象が認められますので、それらの組み合わせには注意が必要です。
図6−4は増粘剤系高流動コンクリートについて、高性能AE減水剤の使用量とスランプフローの関係を増粘剤の種類を変えて試験した結果です。試験に用いた結合材は、普通ポルトランドセメントと高炉スラク微粉末の二成分系です。ナフタリン系高性能AE減水剤とセルロース系増粘剤の併用においては、高性能AE減水剤の使用量を増やしてもスランプフローの増加がないことを示しています。
また最近では、界面活性剤系の増粘剤があらかじめポリカルボン酸系の高性能AE減水剤に配合された高性能AE減水剤(増粘剤一液タイプ)も発売されています。
増粘剤の計量、投入、管理といった煩雑な手間を省略でき、一般のコンクリートの製造設備で対応可能なことが大きなメリットです。
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図6-4 各種増粘剤と高性能AE減水剤の併用効果*20
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(3)細・粗骨材の粒度及び表面水の管理
高流動コンクリートの単位水量は所定のスランプフローが得られる範囲内でできるだけ小さく定め、所要の流動性が得られるよう高性能AE減水剤の使用量を定めています。そのため、通常のコンクリートより使用量が多く、流動性はレディーミクストコンクリート工場における他の使用材料の変動を受けやすい傾向があります。特に細・粗骨材の表面水の変動による影響を大きく受けるため、これらの品質管理は十分に行うことが必要です。
(4)練混ぜ時間
高流動コンクリートは一般に材料分離抵抗性を付与するため粉体量を多くしたり、増粘剤を併用したりします。従って通常のコンクリートより練混ぜ時間を長く必要とする場合が多く、適切な練混ぜ時間については試験室における試し練りのみでなく実機試し練りにより確認した方が良いとされています。
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